田村憲孝の日記

完全日記ブログ。

二条錠と熊本錠

「お客様のため」に全力を!CS向上だ!

 

とかよく聞きますが、具体的にはこれどういう状態になることを言ってるんでしょうか。

 

僕が考える「お客様満足」の定義は

 

・お客様側

喜んでくれること。さらに感謝してくれること。

 

・売る側

モノやサービスの対価を頂く。お客さんが喜んでくれて、なんか嬉しくなる。もっとお客様のためにやろう!という意欲が大きくなること。

 

細かく見ていくといろいろありますが、集約するとこういう状態のことを言うのではないでしょうか。ここまでは誰が見ても異論が無いところでしょう。

 

 

踏まえて。

 

 

◆のりくんの場合

 

京都の田舎のある村にのりくんという少年がいました。お父さんもお母さんも病気がち。のりくんは薬屋をやってる親戚のおっちゃんのお手伝いをしています。

 

村を回ってひとはこ1000円の頭痛薬「二条錠」を売ってまわるのがお仕事です。

 

ある日、村を回っていると、お友達のお母さんにばったり会いました。

 

おばちゃん「あらのりくん。その二条錠、よぉ効くらしいやん!私ここんとこずーーーっと頭がいたくて、ひとはこもらえへん?」

 

のりくん「ええよおばちゃん!ひとはこ1000円やで!」

 

おばちゃん「ああんのりくん水くさいわぁ~。いっつもウチ遊びにきたときいっつも阿闍梨餅あげてるやん!今日は初めてやし100円にして!な!」

 

のりくん「うーん。。」

 

おばちゃん「最初だけやんか!いっつも阿闍梨餅おいしいやろ!」

 

のりくん「わかったわおばちゃん。せやけどまた買うてや~」

 

おばちゃん「さっすがのりくん!ほなもろてくで~」

 

1週間後、またのりくんはおばちゃんに会いました。

 

のりくん「二条錠、よお効くやろ!もうそろそろ無くなってない?」

 

おばちゃん「そうそう。あれめっちゃ効くわ。ちょーーど今朝無くなったとこやねん。またひとはこ頂戴!今回も100円にしてくれるやろ?」

 

のりくん「(うっ)う、うん。ええよ。そやけどまた買うてや!」

 

おばちゃん「さすがのりくん♪ おおきに~」

 

その後、何回かおばちゃんは二条錠を買ってくれましたが、結局いつも100円しかもらえませんでした。そのうちおばちゃんは3ハコ4ハコとまとめ買いをするようになりました。どうやら知り合いに配るようです。もちろん値段は当然のように1ハコ100円です。

 

さすがに、これでは赤字になってしまいます。そこでのりくんは思い切って言いました。

 

のりくん「おばちゃん、ごめんやけどこれ100円やったら全然儲からへんねん。みんなとおんなじように1000円で買うてくれへんか?今までの分はもうええから。。。」

 

おばちゃん「なんやのりくん!あんたあんないっつもよぉしてあげてんのに値段上げるんかいな!もうええわヨソでもっと安く買うわ!頭イタの薬ぐらいヨソでもあるさかいな!」

 

のりくん「あうう。。」

 

 

はい、ここで冒頭にお伝えした「お客様満足」の定義に照らし合わせてみましょう。

 

・お客様(おばちゃん)

最初はちょっと喜んでくれたけど、何回も取引しているうちに90%オフの状態が普通になった。定価で購入してもらうよう伝えると、(ほんとうはそれで当たり前なのに)逆に満足感がなくなってしまった。

 

・売る側(のりくん)

毎回割引をして損。定価で売らせてくれと言うと怒られ超ブルー。

 

まあ、最悪です。

 

 

◆ゆうちゃんの場合

 

ちょうど同じ頃、九州のある村にゆうちゃんという少年がいました。ゆうちゃんものりくんのように定価1000円の頭痛薬「熊本錠」を売って回ってます。

 

おばちゃん「おおおゆうちゃん!今日もがんばってるね!私、最近毎晩アタマが痛いねん。熊本錠1ハコもらおうかな?」

 

ゆうちゃん「おおきにぃ~!1ハコ1000円也で!」

 

おばちゃん「えええ、ゆうちゃん水臭いな~!いっつもウチ遊びに来たらいきなり団子あげてるやんか!今日は最初やし100円にしといてよぉ~」

 

ゆうちゃん「いやおばちゃん、これめっちゃ効くねんで。飲んだらほんまスッキリや!ほかの薬とは全然ちゃうんやで!1000円やけどいっぺん買うてみてーな!」

 

おばちゃん「ほんまに効くんかぁ~??わかった。まあそんだけゆうちゃんが言うならいっぺん飲んでみるわ。ほい1000円!」

 

ゆうちゃん「まいどっ!!」

 

このおばちゃん。熊本錠が気に入って、毎週定価で購入してくれました。もともといいお薬なので飲んでもらったら満足してもらえると、ゆうちゃんはわかっていたのです。

 

そんなある日

 

おばちゃん「お、ゆうちゃん。今日も熊本錠ちょうだい!あれほんまええわ。もうアレなしやったら生きていけへんわ!」

 

ゆうちゃん「まいどーー!1000円になります!」

 

おばちゃん「ゆうちゃん、ごめんひとつお願いがあんねん。」

 

ゆうちゃん「ん、おばちゃんどないしたん?」

 

おばちゃん「いまお金、900円しか持ってへんねん。。。今度ぜったい返すし、今日はこの900円で熊本錠ひとハコもらえへんやろか。。」

 

ゆうちゃん「うーーーん。。。。」

 

おばちゃん「やっぱし、むり。。やんな??」

 

ゆうちゃん「よっしゃおばちゃん。いっつもほんまにありがとう!今日はな、ここ来るまでにめっちゃ売れたから特別に800円にしとくわ!」

 

おばちゃん「えええっ!ええんか!?」

 

ゆうちゃん「ええねんええねん♪ せやけどおばちゃん、今回だけやからな!あと、絶対他のひとには言うたらアカンで!おばちゃんいっつもいきなり団子くれるし特別やで!」

 

おばちゃん「あんたはほんまええ子や。めっちゃ助かる、ありがとう、ありがとう。。。」

 

ゆうちゃん「ほんま今回だけやで!」

 

はい、ここでも冒頭の条件に照らし合わせてみましょう。

 

・お客様(おばちゃん)

もともといい商品なので定価で購入普通に満足。さらに最後は特別感のある割引をしてくれてすごい満足。

 

・売る側(ゆうちゃん)

いっつも普通に買ってくれてありがたい。さらにモノにも満足してくれてて嬉しい。さらにさらに、おばちゃんが困ってるからちょっと値引きしたら喜んでくれた。これからもおばちゃんに喜んでもらいたいと思った!

 

 

どっちがいいですかね。

 

 

はい、ではのりくんは、なぜ最初おばちゃんの要求を飲んでしまったのでしょうか。理由書きます。

 

1.最初やからちょっとぐらい安くしてでも、とりあえず買ってもらおう、という判断。

2.いっつもかわいがってもらってるから、サービスしてもいいか、という判断。

3.断ったら次は買ってもらえないかも、という恐れ。

4.なんとなくうまく商品のメリットを伝えられないので、言うとおり割引しないと売れないという営業スキルの問題。

 

などいろいろありますが、いちばんおっきいのはこれ。

 

5.とにかくその場をスムーズに乗り切りたかった。

 

これです。おばちゃんの言うとおりにディスカウントすれば、とりあえずその場は何も波風立たずに過ぎ去ります。あとあとめっちゃ苦労することはこの時にはわかってません。

 

ゆうちゃんの場合はおばちゃんの値引き要求に対してこう答えました。

 

「いやおばちゃん、これめっちゃ効くねんで。飲んだらほんまスッキリや!ほかの薬とは全然ちゃうんやで!1000円やけどいっぺん買うてみてーな!」

 

これ言うの、結構タイヘンです。おばちゃんの要求を覆し定価での購入以外は認めないと伝えています。さらに商品の魅力を伝えて、おばちゃんを「それでも買おう」という気にさせなければいけません。

 

でも、ちゃんと商品の魅力を伝え、定価にふさわしい価値がある商品であることを理解してもらえれば、もともと1000円の熊本錠ですからおばちゃんも普通に買うわけです。で、モノは良いのでおばちゃんは満足してくれるのです。

 

とにかく、目の前の困難から逃げたかったのりくんは、その瞬間の甘えが後の自分の苦労とお客様の不満につながってしまったのです。

 

最初に面倒くさがらずにきっちりとがんばって対応したゆうちゃんは、お客さんも自分も嬉しいハッピーエンドとなりました。

 

 

はい。この記事のいっちゃん最初に書いた2行。もっかいコピペして貼っときます。

 

 

「お客様のため」に全力を!CS向上だ!

 

とかよく聞きますが、具体的にはこれどういう状態になることを言ってるんでしょうか。

 

 

なんか勘違いしてませんか?だいじょうぶ?

 

 

田村でした。